3日目(新旭〜垂水)

3日目にして、ついにマニアックな駅名の登場だ。

↑の駅名を見たって、ほとんどの方々が、「どこだよ!そんな駅!」と思われるかもしれない。

ぜひ、「駅すぱあと」や「駅前探検倶楽部」 を参照してほしい。

新旭駅は、JR湖西線沿線にあり、近くに風車村という観光施設のある、小さなローカル的駅だ。

垂水駅は、JR山陽本線にあり、近くには明石海峡大橋が通っている。

ついに旅は、田舎から都会へと移動していく。

 

3日目朝、起きて、祖母とともに朝食をとる。

朝からうなぎを食った。

好きじゃないのに、なぜか冷蔵庫の奥から発見されたそうな。

祖母は一人暮らしとは思えないくらい冷蔵庫内にいろんなものを持っている。

朝食後、タクシー会社に連絡する。

ほどなくタクシーは、祖母の家に来て、僕は祖母に別れを告げ、新旭駅へと向かった。

新旭駅発9:17分、新快速電車に乗り込む。

向かう先は、関西空港。

以前、ソウルとロサンゼルスへ旅行したときも、祖母の家に一泊した後、関西空港へ向かったことがある。

そのときは、京都駅まで普通電車でいったが、そこから関空特急「はるか」で向かったものだった。

今日は違う。

オール普通or快速。

「はるか」の存在が、その名のとおり、はるか遠くに感じた。

滋賀県や京都は、トンネルが多い。

特に湖西線側は山が多いのでトンネルが多い。

外を見ても暗闇ばかり。

やっぱり、僕は寝てしまった。

気づいたら、淀川を渡っていた。

おお。大阪だ。

当初の計画では、大阪駅で大阪環状線に乗り換え、途中で南海電鉄に乗り換えたりと非常にややこしいことになっていたのだが、

余裕をみてデータを出してくる「駅前探検倶楽部」は、僕の早足までは予測できなかったのであろう。

乗り換え約1分接続の関空快速があるという存在を知らせてはくれなかった。

余裕で乗れた。

便利なHPだけど、時々こういうハッタリをかますらしいです。

関空快速は、大阪のゴミゴミした町並みを通り過ぎ、大阪ドームの横をとおり、広い海の上を通って

関西空港島へと滑り込んでいった。

 

関西空港旅客ターミナルには、高校時代のクラスメートAさんが、ANA地上職員として勤務している。

国際線出発カウンターで発券業務をするそうな。

「グランドホステス」などと呼ばれ、「キャビンアテンダント(スチュワーデス)」に次いで、女性に人気の航空業界での業種だ。

が、同時多発テロの影響で、入社が7月にずれ込み、現在は、まだ研修中とのこと。

旅の出発前、「今週暇な日ありますか」との問いに、「アナウンス訓練」があるだけだから、昼休みなら会える。ご飯を食べよう」

と返事がきた。

アナウンスもそういややりますな。

アメリカ留学時代、しばしば移動に飛行機を利用していたが、出発ギリギリセーフだったり、パスポートを途中で忘れたり、預けた荷物がでてこなかったり、

いろいろトラブルを体験した僕は、そのたびに地上職のイカツイお姉さまに

「Passenger HARANO! Please come to the Gate 16!」(原野さん!16番ゲートにきなさーい!)

みたいな感じに怒鳴り散らされていたっけ。

けど、日本は違う。

ピンポーパーポーン♪「May I attention Please... All Nippon Airways No○○ bound for New York JFK International Airport...」

ゆっくり・・・そして、なめらかに、優雅に話す・・・。

Aさんもああいう風に話すべく、厳しい特訓を受けているのだろうか。

関西空港到着後、Aさんの昼休みまで、僕は、ボーっと飛行機を眺めていた。

父が航空機メーカー技術者ということから、小さな頃から飛行機には慣れ親しんでいた。

関空に乗り入れている航空会社のマークと、飛行機の機種は、8割は言えるかもしれん。

隠れ航空オタクか?(爆)

やがてAさんは、お昼休みとなり、乗客でごった返すレストラン街にて昼飯を食った。

しかし、制服というものは人を変えるもので、胸に「研修生」という名札はついているものの、颯爽と現れたAさんにはびっくりだ。

昼食中、話題はやはりどんな研修を受けているのかということとなった。

まあ、地上職員として、基本的なこと(アナウンス、便名、時刻の暗記、発券方法等)らしい。

便名、時刻の暗記なんてまあよくやるよと思ったが、それはそんなに辛いことでもないらしい。

それより大変なのが、人間関係だそうで・・・。

女性ばかりの職場ゆえの難しさもあるみたいだ。

思うに女性社会のほうが、男性社会より、先輩後輩の規律が厳しくて、より体育会系的だ。

Aさんの職場も、ドラマや漫画のようなイジメこそないだろうが、厳しい環境にあることは、証言から読み取れる。

昼休みはあっという間に過ぎ、我々がレストランを出た。

会計時に驚いたのだが、何と職員には、割引特典があるのだ。

うらやましい・・・

そう思っていたら、たまたま隣にいた僕も割引特典が適用された。

格好からして明らかに職員でもなく、明らかに乗客でもない。

ラッキーだ。

ありがとうA!

ありがとう関西空港!

 

さて、かくして、関西空港を後にしたわけだが、次なる約束場所へ行くのは、少し大変だ。

約束の相手は、大学時代の後輩、T君だ。

T君の住まいは、愛知県南知多郡。

「は?」

と思われる方も多いであろう。

おそらくT君自身もどうして俺こんなことしてるんだろう・・・と自問自答を繰り返したに違いない。

実は、旅立つ前の日、前述のとおり、この旅に登場する遠くの親戚・友人には、「今週暇ですか?」

というメールを送ったのだが、唯一極めて近くに住む愛知県内の彼にも送ってみた。「今週暇ですか?」

「今週末(金曜)から静岡に行く予定ですがそれ以外はそれに暇っすよー」

おし!「旅にでないか」

「ええ!ちょちょちょっと待ってください(^^;まさか小旅行とは・・・お休みなんですか」

お休みなんだよね。

「まじっすかー いや正直お金がない・・・かな・・・静岡の予算は何とかあるんですが・・・」

苦しそうだ。

そもそも、この旅行のやられっぷりと、一人で行動する孤独感を予め察知していた僕は、旅仲間を欲していた。

この過酷な旅についてこれる、バイタリティあふれる人材は、愛知県には彼しかいないと白羽の矢を立てたのである。

彼にとってはなんとも迷惑な話!

先輩ゆえにはっきり断れないという彼の苦悩がメールの節々に見られる。

普通なら「バカじゃねーの!誰が行くか!ボケ!」

で通信終了だろう・・・。

でも、僕はなおも説得工作を続けた。

本当に悪い先輩だ。

結局、木曜日に関西方面に進出し、翌日、ともに静岡へ向かうという、よくわからない日程となった。

一刻も早く東の静岡に向かいたいT君は、まず西へ向かうこととなったのである。

で、我々の合流場所は、○○駅の改札口前でも、大阪城前でも、○○の像の前でもない。

「米原発姫路行の新快速電車の車内」

である。一本はやい電車でもだめ。遅い電車でもだめ。

そのものに乗らないとダメだ。

僕が関西空港を出た頃、彼は、米原から新快速に乗り、彦根付近を走行中であった。

行きは、関空快速なんていう大阪からの便利な直通電車があったが、帰りは、ちょうどいいのがなかった。

最初、南海電車で、新今宮まで向かう。

そこで乗り換えて、大阪環状線で、大阪に向かう。

大阪駅で、環状線ホームから、東海道線のホームへすばやく移動する。

そこへちょうど姫路行き新快速電車が・・・

真ん中のほうの車両に乗ったというT君からのメールを受け取っていたので、乗客を押し分けて探す。

いた!

窓際に寂しそうに座っている見たことある面影の人物を!

「あ!どうも」

T君は、そう言った。

ひざには、司馬遼太郎の小説が置かれてあった。

その本の裏表紙には、T君の故郷であるM町にあるM町立図書館のバーコード付ラベルが貼られていた。

読書家だ。

退屈な車内で、暇を潰す手段を知っているばかりか、そこで知識教養を得ようとは・・・

何を企んでるんだ!

それにひきかえ・・・

僕がこれまでしてきたことと言えば、寝るかメール打つか・・・

現代病だな。(死)

 

こうして、我々は、大阪駅〜尼崎駅間の新快速の車内で再会を果たした。

向かう先は、神戸!

神戸では、これまた大学時代の後輩M子さんがお待ちだ。

「今日の夜は、神戸牛だな。」

そんな会話をしつつ、電車は神戸駅に着いた。

 

かのNBAスター、ロサンゼルスレイカースコービー=ブライアント選手をご存知だろうか。

彼の父は、彼が生まれる前、日本を旅行し、ここ神戸の地にも訪れた。

そこで、父は、神戸牛を食したという。

「んん!デリシャス!!ヴェリーグッド!(ヴェが発音のポイント)」

と叫んだかどうかは定かではないが、えらくお気にめしたらしい。

それが忘れられなかったのか、アメリカ帰国後生まれた彼の息子に

「Kobe」という名をつけた。

 

「そのコービーブライアントの父親もうなったという神戸牛をぜひ食わないといかん!」

M子嬢と待ち合わせすべく、神戸駅のマクドナルドで待っている間、僕はそう主張していた。

「きっとうめえんだよ。普通さ、おいしいからって、自分の子供に地名つけるか?自分の子供が神戸だったらどうする?」

「いやっすね・・・」

「そこをつけたんだから、すごいんだよ。」

23と22の男がする会話とは思えなかった。

程なく加古川市より、M子さんが来た。

そしてM子さんは、僕らの神戸牛ディナー計画より

「せっかく、関西来たんやし、大阪のほうがええんちゃうん。」

などとおっしゃった。

大阪・・・

「心斎橋とか・・・・」

心斎橋!

別名ひっかけ橋!

大阪の有名なナンパスポットだ。

「おし!行こう。」

我々の心変わりは、秒速だった。

 

神戸駅でコインロッカーに貴重品とカメラを除いた荷物を預けたあと、我々3人は切符を買って再び大阪方面の電車に乗った。

乗ってから、M子さんは、不安な言葉を口走った。

「行き方よくしらへん・・・」

まじかよ!!!

どのあたりなの?

「難波らへんやと思うんやけどな。地下鉄やね。」

東海道線は大阪駅で降りて、地図で難波駅を探す。

環状線になんば駅を見つける。

環状線に乗るぞ。と歩き始めたが、「環状線はどこや!」

と探し始める始末。

やっと1番線が環状線だということを知り、ホームに向かい乗る。

何とも不安な滑り出し。

環状線に乗ったものの、心斎橋へは、地下鉄で行かなくてはいかんことははっきりしていたので、

JR難波駅よりかなり手前の弁天町という駅で降りてしまった。

そこから地下鉄中央線で本町駅まで行き、御堂筋線に乗り換えるつもりだった。

ところが本町駅の御堂筋線ホームは、ものすごい混み具合!

御堂筋線に乗ることを諦め、本町駅から歩くことにした。

本町駅からおそらく心斎橋に一番近い駅であろう「心斎橋駅」まで歩いて15分ぐらい。

ようやく心斎橋の交差点にたどり着いたが、まだ、どこか分からん。

駅員さんとかに聞こうよ。とM子さんに言ってみたが、関西人のプライドとして、超有名スポットを

「どこですか?」と聞くような田舎者のする行為はしたくないようだった。

仕方ない。

駅員に聞いてくる役目は、僕が志願した。

「すいません。人がよく飛び降りるとこどこですか?」

何とも間抜けな質問である。

が、これ以上わかりやすい質問もないだろう。

駅員さんは、笑いながら、「あっちやで」と教えてくれた。

どれだけ歩いただろうか・・・

駅員から教えられたとおり歩いたつもりだったんだが・・・

3人は口々に、愚痴をこぼし始めた。

「つかれた〜」

「もうかえろうよ〜」

もう今となっては、何分歩いたか忘れたが、ようやく目の前にあの「グリコの電光掲示板」が見えた。

「おお!」

ようやく着いたという達成感で、すこしは感動的なシーンなはずだ。

しかし、感動的な言葉もなく、だら〜と着いて、お決まりのように写真撮影をしただけだった。

他にもカニ道楽の入り口上でうごめくカニや、食い倒れ人形とも写真撮影をおもむろに行った。

お疲れの二人は、けっこううんざり気味だったが、僕は、けっこうはしゃいでいた。

その様子をM子さんは不思議そうな目でみていた。

そして、「日本一でかいタコを使ったたこ焼き」といううたい文句のたこ焼きを食った。

やっぱ、大阪まで来たんだから、たこ焼きを食わないとね。

たこ焼きやらお好み焼きに超うるさい大阪でやってるたこ焼き屋だけあって、おいしかったし、

タコの大きさも他の地方と比べても大きかった。

(日本一の大きさかどうかは、未確認)

そして、道頓堀がよく見える串揚げや屋さんに行き、ちょっぴり豪華な食事を食べながら、

あれやこれやとたわいもない話を数時間して、道頓堀を後にした。

 

今日の宿泊予定は、神戸市に住む中学の同級生Kの家だ。

地下鉄とJRを乗り継ぎ、なんとかまた神戸駅まで戻った我々3人は、そこでM子さんに別れを告げ、

神戸市営地下鉄に乗る。

マリンスタジアム神戸に近い垂水というところにKは住んでいる。

移動ですっかり汗びっちょりになった我々は、Kの迎えの車のクーラーすらもありがたかった。

が、K曰く

「俺んち暑いよ。」

聞けば、財政難から、クーラーは、持っていないそうな。

おまけに風通しも悪い。

が、野宿よりだいぶマシ!

まず、汗びっちょり、頭テッカテカの我々にはお風呂が必要だった。

幸い近くにスーパー銭湯風の温泉があったので、そこで旅の汗を流す。

時間は12時を少し回っていた。

T君の疲れは知らんが、僕の疲れはいよいよ限界に近づいていた。

ふらふらになりながら、銭湯をでて、Kの部屋にたどり着いた。

バタンと床に倒れこんだ。

もはや瞬殺だった・・・

数秒で寝息をたててしまった。

 

4日目に続く